CLASWELL下石神井で介護福祉士として入社し、現在はサービス提供責任者を務める樋口さん。
実は、前職は福祉とはまったく異なる仕事をしていました。
そんな樋口さんが介護の仕事を始め、やがて「人生のさいごに関わるケアをもっと学びたい」と思うようになった背景には、初めて働いた介護現場で出会った、一人のご利用者との心残りがあります。

何気なく選んだ介護の仕事。その奥深さに惹かれていった
樋口さんは、塗装・防水職人を経て、トラックドライバーとして働いていたという異色の経歴の持ち主です。身近な人のお看取りを経験したことがあったわけでも、周囲に介護士がいたわけでもありません。
介護の仕事を選んだきっかけは、何か特別な原体験があったわけではなく、これからの時代を考える中で自然と興味を持ったことだったといいます。
その後、大手企業が運営する有料老人ホームに入職。そこで初めて介護の仕事に触れ、想像していた以上の奥深さに気づいていきます。
「初めて働いた介護現場で、最初に仲良くしてくれたご利用者さんなんですが、流行っているものの話をしたり、他愛もない話をしたり。僕が介護をしているはずなのに、逆に自分の心を癒してもらっているような存在でした」
ところが、次第に身体の状態は低下していきます。
食べることが大好きだったのに、少しずつ食事を摂ることも難しくなっていきました。
何とかしたい。けれど当時の樋口さんには、十分な知識も経験もありませんでした。
「まだ自分自身に“介護初心者”という意識があって。何かしたいという気持ちは強かったんですけど、知識がないから、自分から意見を言えなかったんですよね。
先輩スタッフに相談しても、『しょうがないよね』と流されてしまうことがあって。ご利用者一人ひとりに向き合うというより、どこか作業のように進んでいく現場に、違和感や憤りを感じていました。
結局、そのまま亡くなってしまって。僕には何もできなかった、という感覚が残りました」
その経験をきっかけに、「人生のさいごを迎える方のために、自分にできることをもっと増やしたい」と考えるようになった樋口さん。
「あのときの後悔があったからこそ、終末期ケアについて、もっと学びたいと思うようになったんだと思います」
「なんとなく」で始めた介護の仕事は、いつしか、もっと深く向き合いたい仕事へと変わっていました。

「あの時、何もできなかった」その悔しさを、次のケアへ
有料老人ホームを経て、ホスピス型住宅へ転職した樋口さん。CLASWELLは、2社目となるホスピス型住宅です。
一方で、訪問介護の経験はありませんでした。
「訪問介護は初めてだったので、最初は先輩スタッフについてもらって、約3週間、一緒に回りながら丁寧に教えていただきました。OJT形式で学べたのはすごくありがたかったです。
いろいろなスタッフと一緒に回らせてもらったのですが、ベテランだから話しかけづらい、というような雰囲気もなく、どのスタッフも気さくに接してくれたので、すごく安心できました」

周囲から学びながら経験を重ねる中で、樋口さんは「目の前のご入居者のために、今できることはないか」と考えることを大切にするようになりました。 表情を見る。声をかける。小さな反応を覚えておく。
何か特別なことではなく、そんな日々の積み重ねから、できることを探しています。
「1週間前まで元気にご飯を食べていた方が、急に状態が悪くなって亡くなる。そういう場面を何度も見てきました。だからこそ、“今”を大切にしたいという気持ちがすごく強いです。大きなことでなくてもいい。そのときできることは最大限やりたいです」
今日できることが、明日もできるとは限らない。
だから、「また今度」ではなく、今できることを考える。
かつての「何もできなかった」という心残りは、今、目の前のご入居者にできることを探し続ける姿勢へとつながっています。

目指したのは肩書きではなく、できることを増やすこと
2026年3月に入社した樋口さんは、今年7月からサービス提供責任者を務めています。
これまでは一人の介護職として、目の前のご入居者に何ができるのかを考えてきましたが、これからは、自らケアを提案するだけでなく、周囲のスタッフと一緒に、より良いケアをつくっていく役割も担います。そして樋口さんが目を向けているのは、ご入居者へのケアだけではありません。
「スタッフにとっても、働きやすい環境をつくっていけたらと思っています。スタッフ同士の関係や職場の雰囲気が良くないと、やっぱり仕事にも影響すると思うので。何でも話しやすい雰囲気をつくっていきたいです」

「なんとなく」始めた介護の仕事。
一人のご利用者との別れをきっかけに生まれた、「自分には何ができるだろう」という問い。
その答えを探しながら、樋口さんはできることを一つずつ増やしてきました。
そして今、その想いは一人のご入居者へのケアから、一緒に働く仲間やチームへと広がっています。
「目の前の方のために、自分には何ができるのか。」
その問いを持ち続けることが、樋口さんの介護の原点なのかもしれません。






