介護の世界に足を踏み入れて15年。ベテランと呼ばれるキャリアを持ちながらも、「自分なんてまだまだです」と謙虚に微笑む寺戸さん。
かつてはあまりの悲しさに一度は業界を離れた彼女がなぜ今、最もお看取りに近い「ホスピス」という場所で輝いているのか。
その根底には、おじいちゃん・おばあちゃん子だった彼女らしい、純粋で温かな人への愛がありました。

実習での衝撃的な別れ。一度は閉ざした介護への道
寺戸さんが介護士を目指したきっかけは、大好きだった祖母の存在でした。
「将来、何か手伝えることがあれば」という動機で短大へ進学。
しかし、卒業を前に大きな壁にぶつかります。
「介護実習で伺った施設ですごく仲良くなった入居者さんが実習中にご逝去されたんです。その衝撃があまりに強くて、悲しすぎて。自分にはこの仕事は無理だ、と思ってしまいました」
介護福祉士資格は取得したものの、卒業後は飲食業界へ。しかし、数年の月日が悲しみを癒やし、次第に「せっかく取った資格を活かさないのはもったいない」という思いが頭をよぎります。
何より、元気に過ごす祖母の姿を近くで見守るうちに、「やっぱり、将来自分にできることがあるなら手伝いたい」という想いが、再び介護の現場へ戻る確かな決意となりました。

お一人おひとりと向き合う時間が、介護の本質を教えてくれた
介護付有料老人ホームや老人保健施設など、さまざまな現場を経験してきた寺戸さんは、2026年2月1日にCLASWELL大宮へ入職しました。
派遣会社の担当者からホスピスを紹介された際は、初めての環境に「自分の経験で大丈夫だろうか」と不安がよぎったといいます。それでも、「新しい知識を学べることは、自分にとってプラスになるはず」。そう前向きに捉えられたことが、入職への大きな後押しとなりました。
そうして新たな一歩を踏み出した寺戸さんが、現場で何より新鮮に感じたのが、ご入居者との時間のゆとりでした。
「以前の職場では時間に追われ、コミュニケーションが二の次になることもありました。でもここでは訪問介護なので、1対1で向き合う時間がしっかりある。相手を深く知ることができるし、自分のことも知ってもらえる。それが何よりありがたいです。」
相手の表情を読み取りながら、出身地や好きなものの話で少しずつ距離を縮めていく。
「ちょっとしつこいかなというくらいにお声がけして、普段無口で笑わない方の笑顔を引き出せた時は本当に嬉しかったです」
そう語る彼女のケアの本質は、まさに『心と心の対話』そのものです。

悲しみを乗り越えるプロとしての覚悟と、揺るがないモチベーション
ホスピスという場所柄、お看取りを避けて通ることはできません。かつて実習で泣き崩れていた寺戸さんは、15年のキャリアを経て、プロとしての覚悟を身につけてきました。
その転機となったのは、あるご入居者からの言葉でした。
「以前働いていた施設で、お看取りがあったときに泣きながら仕事をしていたことがあったんです。目を腫らしたまま別の方の介助に伺うと、その入居者さんから『泣いたの? 大丈夫?』と心配されてしまって。その時、プロとしてこれではいけない、自分がしっかり支える側でいなきゃ、と強く感じました」
今でも、別れの寂しさが消えるわけではありません。
「やっぱり関わっていると、入居者さんのことが大好きになっちゃうのでお別れは本当に辛いです。でも、今いらっしゃる方たちを支えるためには、気持ちを切り替えなければいけません。ご家族の前では、ご家族より泣いてはいけない。そう自分に言い聞かせています」
それでもこの仕事を続ける理由は、シンプルに「人が好きだから」という一点に尽きます。
「おじいちゃんおばあちゃん子だったこともあって、どうしても入居者さんに家族の姿を重ねてしまうんです。でも、好きな人のためだからこそ、頑張れる。それが私の、一番のモチベーションですね」
寺戸さんのこれからの目標は、ご入居者の「やりたい」という心の声を一つでも多く引き出し、それを一緒に叶えて喜び合うこと。
かつて大きな挫折を味わった彼女は今、『介護は人と人の心の通い合い』という原点を何よりも大切にしながらご入居者の日常に寄り添い続けています。






