白金台のホスピス型住宅「CLASWELL」には、ホーム長の隣で現場を支えながら、「その人らしい最期」と「ご家族の納得」を日々のケアで形にしている副ホーム長がいます。
看護師24年目。
大学病院や中規模病院、訪問診療、訪問看護ステーション、ホスピスなど、複数の現場でマネージャーとして経験を積んできた方です。
前職の有料老人ホームではホーム長として、認知症や医療依存度の高い方々と向き合ってきました。
「ホスピスで働くうえで大切にしていることは何か」
「CLASWELLならではの“ケア”とはどんなものか」
その答えの根っこには、幼い頃に最愛のお父さまを看取った記憶や、これまで関わってきた多くの患者様との思い出がありました。
ホスピスの看護・介護に興味がある方、チームの中心で現場をつなぐ役割に挑戦したい方に、ぜひ読んでいただきたいお話です。

4歳の時に父が他界。記憶に残っている「不安がなかった」という安心感
副ホーム長の小坂さんが看護師になった背景には、幼い頃の体験があります。
「父を4歳のときに希少がんで亡くしたんです。最後は腹水で苦しそうだったと聞いています。
昭和の時代で、ホスピスという選択肢もなく、医療センターで看取りました」
当時のことを細部まで覚えているわけではない。
それでも、小坂さんの中に強く残っている感覚があります。
「でも、不思議と“怖かった”とか“不安だった”という記憶がないんです。
先生や看護師の方に支えてもらって、母も小さな子どもを抱えながら何とか看取れたと聞いていて。
医療者に支えられていた安心感は、ずっと心に残っています。
たまたま病室で父と二人きりになったときに、父が尿意を催して“看護師さん呼んできて”って言ったんです。
でも私は“自分でやる”って言ってやろうとした。けどできなくて、ナースステーションに泣きながら助けを求めに行きました」
そこで看護師にかけてもらった言葉が、今も胸に残っているといいます。
「“よく頑張ったね。一緒にやろうね”って声をかけてくれて。
看護師さんと一緒に父のオムツ交換をしたのですが、こんなふうに大切な人をケアできる人になりたいって気持ちが、私が看護師になった背景にあります」
主治医が「今後のために」と父の声をカセットテープに残す提案をしてくれたことも、大きな記憶として残っています。
「父の声を、何十年も繰り返し聞けるように残してくれていて。私の名前の由来でもあるのですが、“恵まれた子どもになるんだよ”って父の言葉は、おかげさまでずっと頭の中に残っているんです。
残された家族のためのケアって、こういうことなんだなって実感しています」

一度は落ちた面接。副ホーム長として再挑戦することに
前職はやりがいに満ちていた一方、これからの自分の人生をどう送るかを考える中で、転職を決意しました。
「最初はCLASWELLの地域連携の看護師募集を見て応募しました。人と人をつなぐのが好きだし、“このフィールドだと、看護師ができることがもっと広がるし、伝えられる”って思ったんです」
結果は不採用。でもその後、連絡が来ました。
「地域連携ではなく、副ホーム長として一緒に働いてくれないかと打診をいただいて。
副ホーム長という忙しい役割に不安もあったのですが、話し合いを重ねる中で“自分にもできるかもしれない”と思えたことが決め手になりました」

現場での看護の軸を尋ねると、小坂さんはこう話します。
「ホスピスですから、当然、苦痛のケアには全力を尽くします。でも、ある段階を超えると“残されたご家族のための時間”も強く意識するようになります。最期の時が穏やかであれば、ご家族の記憶も変わるから」
終末期では、ご家族が無力感に襲われることもある。
だからこそ、家族をいい意味で巻き込むことを大切にしているといいます。
「何でもいいんです。声をかける、手を握る、ケアに参加する。
“自分にもできた”って感じられることが、ご家族の支えになると思っています」
彼女が語ってくれたのは、「食べる」を支えきったエピソードでした。
乳がん終末期の98歳女性。元々は小児科の女医だった方です。
「その方はこれまでの暮らしの中で、毎日三食食べてこられたから、娘さんから“亡くなる瞬間まで食べていてほしい”という希望があったんです」
意識が朦朧としていて、通常は難しい状態。
それでも、“できない”で終わらせませんでした。
「ST(言語聴覚士)と医師と歯科の先生と調整して、まず食事の匂いを感じてもらうことから始めました。匂いを感じると口を開けてくれるんです。
“食べる”って、その人の人生そのものなんだなって思いましたね」
点滴に頼らず、何か少しでも食べられるなら楽しみたい。
その気持ちに寄り添い、少しずつ味わえる時間を最期までつくりました。

50代の男性、19日間の時間。手を握って残した“夫婦の記憶”
「CLASWELL白金台のオープン日にご入居されて、19日後に息を引き取った方がいました」
苦痛はほとんどなく、穏やかに最期を迎えられたと言います。
「この19日間で、ご夫婦の歴史をたくさん聞けました。
息を引き取ってから、主治医の先生が来るまで1時間くらい待っている間、奥さまがずっと旦那さまの手を握られていたんです。
すると“ずっと握っていたから、右手だけ硬直してしまった”という奥さまの言葉があって。
“せっかくだから手をつないでいる写真を撮りましょう”と提案して、最後に写真を撮ったんです」
最後の記憶が、手を握った温度と一緒に残るように。
そんな想いが、そこに詰まっていました。
“食べること”はリスクがある。だからこそ、チームで共通認識をつくる
小坂さんが今、特に大切にしているのが“食べるを支えるケア”です。
「看護師をしていると、最後に食べなくなるのには理由があるってわかる。
だから専門職の目線では“食べないことは悪いことじゃない”と思うんですが、ご家族が“食べさせたい”と思うなら、可能な限りその気持ちに寄り添いたいと思っています」
ただし、食事にはリスクが伴う。
だから“誰か一人の判断で背負わない”ことを徹底しています。
「現場の看護師は“実際にどこまでやっていいのか”って不安になりがちなんです。
だからこそ、近隣の訪問リハや歯科なども巻き込み、チームで支える体制をつくるようにしています。
誰か一人が抱えて尻込みしてしまわないように、“みんなで支える”ことが大事なんです」
過去に関わった94歳のパーキンソン病の方の話もしてくれました。
「『窒息してもいいから、食べたいものを食べたい』。
そうおっしゃるご本人の強い想いを受け、私たちも覚悟を決めて、お好きなものを楽しんでいただいていました。
その後、おせち料理のちまきを喉に詰まらせて亡くなられたのですが、ご家族は私たちを責めるどころか、こう仰ったのです。
『おせちの中で一番好きな伊達巻きを食べられて、本当に幸せだったと思います。一人の命を守ることは、その家族をも一緒に守ることなんですね』と。
この言葉が今も忘れられません。
だからこそ私は、『リスクを恐れずに支えるための共通認識をつくる』ことこそが、自分の仕事だと思っています」

ホーム長と現場の“通訳”として。毎朝、出勤したら全室をまわります
副ホーム長としての日々は、現場の核になる役割そのものです。
「私の仕事は、ホーム長と現場をつなぐ役割ですね。ホーム長の思いや目的を横で感じながら現場に伝える。
逆に、現場のみんなの思いをホーム長に返す」
運営の事務的な部分にも関わりつつ、採用窓口として候補者対応や見学対応も担っています。
「バランスが課題です。時に看護師寄りになりがちで、看護師ならではの“安全が最優先”という気持ちを強く出してしまいそうになることもある。
そういう時はホーム長と話し合って、またバランスを取り直せることもあります」
毎朝、出勤したら全室を回る。スタッフにも1日1回は必ず声をかけるようにしているといいます。
「目が合ったら必ず声をかける。
それだけで現場の空気って変わるんです」

たとえご入居につながらなくても、看護師としてできる限りのことをする
小坂さんらしい判断が滲むエピソードもありました。
「ある時、入居相談の電話が来たんですが、相談者の方が切羽詰まっていて、 “家で看てるけど、もう亡くなっちゃうかもしれない”って」
本来の仕事は見学や申し込みへつなげること。
でも小坂さんは、まず“今必要なこと”を優先したといいます。
「まず訪問診療医から一通り話を聞いて整理して、判断を仰いでみてください。 そして一呼吸ついたら、また連絡ください、とお伝えしました」
見学や契約に結びつかなくても、「看護師として、CLASWELLとして、今できることはしたい」
その姿勢が、小坂さんの軸になっています。
後日談ですが、ご相談をいただいたのち、改めてお電話をいただきこの方はご入居されたそうです。

看護師って、こんなに楽しい仕事なんだよ、って伝えたい
これから現場でやりたいことを聞くと、
「生活相談員と連携して、レクリエーションをもっとやりたいと思っています。
クリスマスツリーを設置して、それぞれのお家のオーナメントを一つずつ持ってきてもらって、たとえ歪でもいいから、みんなで作ろうって提案しているところです」
その話を相談員にすると、すぐに「やりましょう」とツリーを注文してくれたそうです。
最後に、これからホスピスで働く看護師に向けて、彼女は迷いなくこう言いました。
「看護師の仕事って、すごく楽しいよって伝えたいです。
命を支える仕事だから、行きすぎた指導というよりも、看護師それぞれの思いをまずは大切にする。
その倫理観が育つと、こんなに楽しい仕事ってないと思えるようになると思うんですよ」
副ホーム長の彼女がつくりたいのは、苦痛を取るだけの看護ではなく、ご本人とご家族が「この時間でよかった」と心から思えるケアです。
CLASWELLには、その想いをチームで形にできる現場があります。
興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。







