2025年10月、CLASWELL信濃町で行われたのは、株式会社ハコカラさんによる「三味線演奏会」。
ふだんは車椅子で過ごされる方が多く、入居者さん同士でおしゃべりする機会もそう多くはないフロアで、音が合図になって気持ちがふわっとほどけていく、そんな時間になりました。

いつもは静かな4階が「舞台」になった日
会場になったのは4階フロア。
今回はスタッフとハコカラさんが一緒になって、飾りつけや会場づくりを丁寧に準備しました。
始まるまでは、スタッフもどこかそわそわしていて、少し緊張した空気。

ところが、演奏が始まった途端に、その空気がガラッと変わりました。
拍手の代わりに、鈴の音がぱっと広がります。
実は今回、参加される方全員に手持ちの鈴をお渡ししていました。

拍手が難しかったり、声を出すのが久しぶりな方でも、鈴なら鳴らせる。
「ちゃんと楽しんでますよ」「ここにいますよ」ということが、スタッフにも演奏者にも伝わるように、という工夫です。
三味線の音が鳴った瞬間、それまで静かだった空間にシャラシャラという音が重なり、空気が一気にやわらかくなりました。

聞き覚えのある曲が流れると、自然と口ずさむ方もいらっしゃいました。
スタッフも積極的に声をかけながら一緒にリズムをとります。
「いいですね、その調子です!」
「この曲ご存じですか?」
と声をかけ、一緒に鈴を鳴らす。
すると、ご入居者の表情もふっとゆるみます。
演奏と鈴と歌声が、ひとつのリズムになっていきました。

廊下からそっと参加する“もう一つの客席”
車椅子での移動が難しかったり、会場まで来られなかった方もいました。
でも、その方たちが「参加できなかった」わけではありません。
ご家族と一緒に廊下側で耳をすませていたり、ドアを少し開けて音だけを楽しんでいたり、そんな“もう一つの客席”がそこにありました。

今回あらためて感じたのは、音は目を閉じていても届くということです。
三味線の力強い音色は、耳で聞くだけでなく、からだの奥のほうにも響きます。
表情や動きとしての反応が見えなくても、芯のところで「音が鳴っていること」を感じてくださっているのではないかと信じています。

「今日もいい1日だったね」で終われるように
このホスピスが大切にしているのは、医療や介護だけで1日が終わらないこと。
「今日は誰かが来てくれた」
「今日はちょっと笑った」
「今日は音がきれいだった」
そんなふうに思ってもらえる時間を、地域やご家族にも開いていくことを目指しています。







