介護士・植野さん インタビュー
変わらない日々に、どこかで違和感を抱えていました
植野さんは、これまで介護業界とはかけ離れた、デパートでの販売業務や、経理や事務の仕事を経験してきました。
決して嫌いな仕事ではなかったけれど、気づけば毎日が流れるように過ぎていく。
マンネリ化を感じていた時に、介護士の姉からある言葉をかけられます。
「このまま、何十年も同じ毎日が続いていくのかな、何かを変えなきゃって思ったんです。でも、何をしたらいいのかわからなくて、そんな時姉から言われた 「介護の仕事、向いてるかもよ。やってみなよ」という言葉がとても刺さりました。」
その言葉に背中を押されるようにして、介護の世界へと足を踏み入れた植野さん。
けれど、最初の現場では、戸惑いを感じる場面が多くありました。

ご入居者に“触れる”ことすらためらっていました
介護士としての初めての現場は、有料老人ホームの入浴専従。
派遣スタッフとして、1日何件もの入浴介助を繰り返す日々でした。
「実際にご入居者を前にすると、お体に触れることすらためらったのを覚えています。」
それでも、毎日ご入居者に笑顔で声をかけ、当たり前のように介助をしている先輩たちの姿を見て、少しずつ心が変わっていきました。
「自分が恐れていたら、ご入居者はもっとご不安な思いをするだろうと思いました。だから私も徐々に成長していこうと。
また精神に加えて、体力的にも疲労もたまっていましたが、すぐに辞めるのはかっこ悪いと思っていましたし、こうやって誰かに寄り添える人になりたかったのかもしれない、って新たな気づきもあったんです。」

きっとここから何かが始まる、そんな予感がしました。
1年間入浴専従として従事したあと、別のホスピスへ転職をし半年ほど働いていました。
介護士としてもっとステップアップしたい、看護師のもっと近くで働きたい、そんな想いが実現できるのがホスピスだと思っています。
「死に向き合う現場なんて、私にできるんだろうか。もちろん不安もありましたが、看護師と介護士と多職種で連携をとって、ご入居者が穏やかに過ごせ環境づくりに対して面白みも感じていました。」
そんな日々にも少し慣れてきたある日、「ホスピス オープニングスタッフ募集」の文字が目に留まりました。
「0からチームで全てをつくりあげていく、そんな挑戦ができるのは今だけかもしれないと思ったんですよね。」
そして、2025年2月、CLASWELLに入社。
「見学に来たとき、まず驚いたのは施設の清潔さ。ご入居者が安心して過ごせる環境が整っていると思いました。石川ホーム長が謙虚で物腰柔らかそうな人で丁寧な方だなと、安心することも出来ました。」
けれど、CLASWELLの現場でも毎日葛藤の日々を過ごしています。
「皆さん覚悟を持ってここにご入居してきてくださっていると思っています。だからこそはじめは警戒心が強い方も多く、「ほっといてくれ」と言われてしまうこともありました。だけど、「おはようございます!昨晩は眠れましたか?」「痛みはありませんか?」と毎日少しずつ声をかけ続けて、相手の表情がふと緩んだ瞬間に飛び込んでいく。そうして、関係を少しずつ深められるようにしています。」
一人ひとりにストーリーがあり、ご家族がいて、それらにどのような形で自分が向き合っていくことができるかを考えることがやりがいだと話していました。

「本当に、見れてよかった」ご入居者が桜を見られた日
「寝たきりの妻に、桜を見せてあげたいんです」と、あるご入居者のご家族から依頼を受けました。
そこで専属の理学療法士と協力し、寝台で外出支援を実施。
春の空の下、満開の桜の並木道を通ったあと、静かに帰ってきた奥様。
「普段は物静かな方だったので「本当に見れてよかった」とつぶやいたその声が今でも耳に残っています。
誰かの「今日」を支えることが、こんなにも尊く、温かいものだと、ホスピスで働くようになって初めて知りました。」
人の「死」に立ち会うことは、決して簡単なことではないけれど、隣には心強い看護師がいて、サポートしてくれる仲間もいる。
「だから私もその人の「生」に正面から向き合えるようになったのだと思います。」

介護士と看護師の間の垣根がなく、医療面でのケアも教えてくれるので、包括的に理解しながらご入居者のケアをすることができるところも大きな魅力の一つだと語ります。
今後、看護師の資格取得にも挑戦したいという植野さん。
介護は、ただ“生活”を支える仕事じゃない。
“その人が、その人らしく生ききること”を支える仕事です。
一人ひとりの人生の物語を最期まで大切に紡ぐこと。それが私たちの役割なのだと胸を張って言えます。
そんな日々を、一緒に支えてくれる方と出会えたら嬉しいです。